繁忙期のたびに繰り返す「人が足りない」

GW、お盆、年末年始、3連休。繁忙期が近づくと、多くの施設で同じ会話が繰り返されます。「今回も人が足りない」「派遣を手配できるか」「シフトを増やせるか」。

しかし、ある施設では3年連続で繁忙期に臨時スタッフを増員せずに運営を回しています。特別な設備投資をしたわけでも、スタッフに過大な負担をかけたわけでもありません。やったのは「業務の再設計」です。

なぜ繁忙期に人が足りなくなるのか

まず、「人が足りない」状態を分解します。繁忙期に起きているのは、以下の3つの同時発生です。

1.5倍
チェックイン件数の増加
2倍
電話問い合わせの増加
1.3倍
クレーム・要望の増加

チェックイン件数が1.5倍になると、フロントの作業量は単純に1.5倍になります。加えて、チェックイン待ちの行列が発生し、ゲストのイライラが増え、クレームも増えます。電話も増えるので、フロントスタッフは受話器と対面対応を交互にこなすことになります。

この構造を理解すると、解決策は「人を増やす」だけではないことが分かります。チェックイン業務そのものの所要時間を短くする、または事前に済ませる仕組みを作れば、件数が1.5倍になっても対応可能です。

人員追加なしで繁忙期を回した3つの施策

施策1:チェックインの事前完了

宿泊予約の確定後、ゲストにメールで事前チェックインの案内を送ります。氏名・住所・連絡先などの宿泊者情報を事前に入力してもらい、当日はQRコードの提示と本人確認だけで鍵を渡せるようにします。

事前チェックイン率が60%に達すれば、当日のフロント対応件数は40%に減少します。繁忙期の1.5倍の件数でも、実質的には閑散期の0.6倍の作業量になります。

事前チェックイン率を上げるコツ

予約確定メールに「当日の待ち時間をなくすために」という文言でリンクを添付。メール開封率は60〜70%、うち入力完了率は50〜60%が目安。予約の3日前にリマインドメールを送ると完了率が10〜15ポイント上がります。

施策2:チェックイン時間帯の分散

多くの施設では、チェックイン開始時刻(14:00や15:00)直後に到着が集中します。この「ピーク」を意図的に分散させることで、単位時間あたりの対応件数を平準化できます。

時間帯分散だけで、ピーク時のフロント負荷を30〜40%軽減できた施設もあります。

施策3:電話対応の削減

繁忙期に電話が増える原因の多くは、「チェックイン時刻の確認」「アクセス方法」「駐車場の空き状況」「アメニティの問い合わせ」です。これらは予約確認メールやSMSで事前に案内できる内容です。

ある温泉旅館では、予約確認メールにチェックイン手順・アクセスマップ・館内案内・アメニティ一覧のリンクを追加したところ、繁忙期の電話件数が35%減少しました。

業務再設計の前後比較

50室規模のホテルで、上記3施策を導入した場合の繁忙期フロント業務量を比較します。

導入前
繁忙期はスタッフ6名体制
導入後
通常の4名体制で対応可能

追加の2名分の人件費は、派遣の場合1日あたり約24,000円。繁忙期を年間60日とすると、年間144万円のコストが不要になります。

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「人を増やす」以外の選択肢を持つ意味

繁忙期に人を増やすことが悪いわけではありません。問題は、それが唯一の選択肢になっていることです。

臨時スタッフの追加には、以下のリスクがあります。

業務量そのものを減らす施策を先に打っておけば、臨時スタッフが必要になる場面自体が減ります。仮に追加する場合でも、必要人数が少なくなり、教育の負荷も下がります。

繁忙期対策チェックリスト

まとめ:業務量を減らしてから、人の配置を考える

繁忙期の人員計画は、まず「業務量を減らせないか」を検討し、その上で「残った業務量に対して何人必要か」を決めるのが正しい順序です。

人を増やすのは簡単ですが、教育コスト・品質リスク・人材確保の不確実性を伴います。業務の再設計は一度行えば毎年効果が続く。繁忙期対策は、人の数ではなく業務の仕組みから見直してください。