結論から:OOOは「在庫から除外」、OOSは「一時的に使えない」
OOO(Out of Order)とOOS(Out of Service)。どちらも「部屋が使えない」ことを意味しますが、ホテルの収益管理においては明確に区別すべきステータスです。OOOは販売在庫から完全に除外される状態、OOSは在庫には含まれたまま一時的に利用できない状態を指します。
この違いがなぜ重要か。RevPAR(客室あたりの収益)の計算式に直接影響するからです。RevPARは「客室売上 / 販売可能客室数」で算出します。OOOの部屋は分母の販売可能客室数から除外されるため、RevPARの数字は維持されやすくなります。一方、OOSの部屋は分母に含まれたまま売上がゼロなので、RevPARを押し下げます。
つまり、同じ「使えない部屋」でも、OOOとOOSのどちらに分類するかで、経営指標の見え方が変わるのです。
OOO:物理的に販売できない状態
OOOは、その部屋に物理的な問題があり、ゲストを泊められない状態です。具体的には以下のようなケースが該当します。
- エアコンの故障で室温調整ができない
- 水漏れが発生しており、修繕が必要
- 窓やドアの建付けに安全上の問題がある
- 改装工事で内装を撤去している
- 害虫駆除の薬剤散布後、換気が完了していない
いずれも「お金を払ってくれるゲストがいても、泊めてはいけない」状態です。OOOの部屋は、予約システム上で販売対象から外れ、在庫として表示されません。
OOS:一時的に販売を止めている状態
OOSは、物理的には使えるけれど、ホテル側の判断で一時的に販売を止めている状態です。
- 清掃が完了しておらず、まだチェックイン準備ができていない
- 定期点検中で、午後には販売可能に戻る
- VIPゲストのために直前まで部屋をホールドしている
- 繁忙期に備えてバッファとして確保している
- 軽微な修繕(壁の小傷、カーテンレールの調整など)を予定している
OOSの部屋は「今は売らない」だけであって、「売れない」わけではありません。状況が変われば、同日中に販売可能に戻すことができます。
RevPARへの影響を数字で見る
100室のホテルで、5室が使えない場合を考えます。ADR(平均客室単価)は10,000円、販売可能な部屋は95%が埋まっているとします。
試算条件: 100室、ADR 10,000円、稼働率95%(販売可能客室ベース)
OOOにすると分母が95室になるため、RevPARは 95室 x 10,000円 x 95% / 95室 = 9,500円。OOSにすると分母は100室のままなので、95室 x 10,000円 x 95% / 100室 = 9,025円。同じ実態なのに、ステータスの分類だけでRevPARに475円の差が出ます。
この差が問題になる場面
RevPARは、オーナーや運営会社への月次報告、STR(業界ベンチマーク)との比較、投資家向けの説明に使われます。OOOとOOSの使い分けが曖昧だと、自施設のRevPARが実態より良く見えたり悪く見えたりします。
特に注意すべきは、「本来OOSであるべき部屋をOOOにして、RevPARの数字を維持する」という運用です。意図的かどうかにかかわらず、OOOの濫用はデータの信頼性を損ないます。
OOO / OOS 比較表
| 項目 | OOO(Out of Order) | OOS(Out of Service) |
|---|---|---|
| 定義 | 物理的に販売不可 | 一時的に販売停止 |
| 販売在庫 | 除外される | 含まれたまま |
| RevPAR計算 | 分母から除外 | 分母に含む |
| 復帰見込み | 修繕完了後(日〜週単位) | 当日〜翌日 |
| 判断権限 | 施設管理/GM承認が望ましい | フロント/清掃リーダーで判断可 |
| 代表的なケース | 設備故障、改装工事、水漏れ | 清掃未完了、定期点検、VIPホールド |
現場で起きている判断の曖昧さ
「壊れているけど泊まれなくはない」問題
バスルームのシャワーヘッドが1つだけ動かない。テレビのリモコンが反応しない。クローゼットの扉がスムーズに開閉しない。こうした「泊まれなくはないが、快適ではない」状態の部屋を、OOOにするかOOSにするか。あるいはそのまま販売するか。現場では日常的に迷う判断です。
明確な基準がない施設では、判断がスタッフ個人の感覚に依存します。Aさんは「リモコンくらいなら販売する」と判断し、Bさんは「クレームになるからOOSにする」と判断する。結果、同じ不具合でも日によって扱いが変わります。
OOOの解除忘れ
修繕が完了したのに、PMSのステータスがOOOのまま放置されるケースも多発します。修繕業者が作業を終え、施設管理に報告し、施設管理がフロントに伝え、フロントがPMSを操作する。この4ステップのどこかで情報が止まると、すでに使える部屋が「使えない部屋」として在庫から消えたままになります。
特に繁忙期にこれが起きると、販売できる部屋を無駄にしていることになります。
OOOとOOSの基準が曖昧な施設では、3つのリスクが同時に発生します。(1) RevPARが実態を反映しなくなり、経営判断の精度が下がる。(2) 販売できる部屋が在庫から消え、売上機会を逃す。(3) 本来OOOにすべき部屋がOOSのまま販売され、ゲストクレームにつながる。
運用ルールの設計── 判断基準をつくる
不具合カテゴリ別の判断テーブル
すべての不具合を個別に判断するのではなく、カテゴリごとに事前に基準を決めておく方法が現実的です。
判断基準の例
| 不具合カテゴリ | OOO | OOS | そのまま販売 |
|---|---|---|---|
| 空調が完全停止 | 該当 | - | - |
| 水漏れ(使用に支障あり) | 該当 | - | - |
| ドア/窓の施錠不良 | 該当 | - | - |
| TV映らない | - | 該当 | - |
| リモコン不調 | - | - | 代替リモコンで対応 |
| 壁紙の小傷・汚れ | - | - | 修繕計画に記録 |
| 清掃未完了 | - | 該当 | - |
| 定期点検中 | - | 該当 | - |
判断に迷うケースは必ず出てきます。そのときのエスカレーション先(清掃リーダー→施設管理→GM)を決めておけば、スタッフが1人で悩む時間をなくせます。
ステータス変更の承認フロー
OOOへの変更はGM(または施設管理責任者)の承認を原則とし、OOSへの変更はフロントリーダーまたは清掃リーダーが判断できるルールにするのが一般的です。OOOは在庫数に直接影響するため、変更のハードルを高くしておく合理性があります。
逆に、OOOからの復帰(販売可能への変更)は、検査完了報告と連動させます。修繕完了→検査→清掃→販売可能という復帰フローを明文化しておけば、解除忘れのリスクが下がります。
月次でOOO/OOS日数を可視化する
運用ルールを作っても、実態を把握できなければ改善は進みません。月次レポートに以下の数字を加えることを推奨します。
- 月間OOO室日数と、カテゴリ別の内訳(空調、水回り、電気、内装など)
- 月間OOS室日数と、理由別の内訳(清掃遅延、点検、VIPホールドなど)
- OOOの平均復旧日数(発見→販売復帰)
- OOO/OOSによるRevPARへの影響額
数字が蓄積されると、「空調故障のOOOが毎年夏に集中している」「清掃遅延によるOOSが月曜日の午前に多い」といったパターンが見えてきます。パターンがわかれば、予防的な手を打てます。
ステータスの区別は「面倒な作業」ではなく「判断の精度」
OOOとOOSの区別は、単なるPMSの操作ルールではありません。「この部屋はいつ売れるようになるのか」「本当に販売できない状態なのか」「修繕の優先度はどうか」── こうした判断の精度を上げるための分類です。
基準を決め、判断フローを整え、月次で実態を可視化する。派手な取り組みではありませんが、販売可能客室数を1室でも増やすための地道な仕組みづくりです。
