RevPAR = OCC × ADR:分解で見る
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査(2024年)」、STR国内月次レポート、日本ホテル協会(JHMA)統計より作成(参考値)
RevPAR(Revenue Per Available Room、販売可能客室1室あたり売上)は、客室売上を総客室数で割った指標で、OCC(稼働率)とADR(客室平均単価)の積として表されます。つまり「RevPAR = OCC × ADR」という分解式が、レベニューマネジメント全体の基本公式です。
RevPARは単一のKPIとしてよく使われますが、その内訳を見ずに総額だけで評価すると打ち手を誤ります。同じRevPARでも「OCCが高くADRが低い」ケースと「OCCは低いがADRが高い」ケースでは、改善の方向性がまったく違います。分解して現状を把握することが出発点です。
図1: OCC × ADR の2軸マトリクス / 出典: ビジネスブレーン作成
OCC改善の型:稼働ギャップを埋める
OCC(稼働率)を上げる打ち手は、大きく「需要喚起」と「販路拡張」の2方向に分かれます。自館の現状がどちらの型に近いかを見極めてから施策を選ぶのが基本です。
需要喚起で埋める
平日・閑散期に稼働ギャップがある場合、プロモーションや早割・連泊割などで需要を前倒しに取り込みます。重要なのは、ADRを過度に下げずに需要を喚起すること。割引プランを増やすよりも、付加価値プラン(朝食無料連泊・アーリーチェックインなど)で差別化する方がADRを守れます。
販路拡張で埋める
販路に偏りがある場合、扱っていないOTAへの新規出店、法人契約の拡大、メタサーチ経由の直予約強化などで、新しい流入を増やします。ただしOTA拡張はチャネル別実効単価を確認し、手数料控除後のADRが許容範囲かを事前検証する必要があります。
ADR改善の型:単価を守る値付け
ADRを上げる打ち手は「値付け」「販売構成」「季節戦略」の3層で整理されます。詳細は別記事「ADRを上げる5つの打ち手」で扱いますが、本稿ではRevPARとの関係に絞って触れます。
上位タイプへの誘導
スイート・デラックスタイプの稼働が慢性的に低い場合、価格差を縮めて「手の届く価格」に調整することで、上位タイプの販売比率が上がり館全体のADRが底上げされます。ADR改善は「値上げ」だけでなく、販売ミックスの変更でも実現できます。
直前値下げの回避
14日前以降に稼働が目標を下回った場合、反射的に値下げに走る施設は多いですが、これがADR崩しの最大要因です。値下げの代わりに朝食付きアップセル、レイトチェックアウト特典、駐車場無料などを組み合わせ、単価を守りながら稼働を埋める設計が有効です。
OCCだけを追う施設は、週末直前に値下げで埋めて平均ADRを落とし、翌月の前年比で崩れます。ADRだけを追う施設は、高単価プラン中心で稼働を落とし、人件費・固定費負担で利益を削ります。RevPARを見るのは、この両極の罠を避けるためです。
同時最適化のトレードオフ:片側だけ追うと崩れる
OCCとADRは多くの場面でトレードオフの関係にあります。価格を下げれば稼働は上がりやすく、価格を守れば稼働は伸びにくい。この基本構造を理解せずに片側だけを追うと、RevPARは伸びません。
ピーク日・需要強い日の考え方
需要が強い日は、OCCをわずかに犠牲にしてADRを取りに行くのが定石です。OCCを100%まで積み増すと、直前の低単価予約で平均ADRが崩れ、RevPARは逆に下がることがあります。OCC 95%・ADR+15%の方が、OCC 100%・ADR+5%よりもRevPARが高くなる日が存在します。
閑散日・需要弱い日の考え方
需要が弱い日は、ADRをわずかに犠牲にしてOCCを取りに行きます。ただし無制限の値下げではなく、変動費(アメニティ・清掃人件費など)を上回る水準を「価格下限」として設計することが重要です。これを下回ると販売するほど利益が削られる構造になります。
月次改善サイクル:レビューの型
RevPARの継続改善には、月次レビューの型を固定することが最も効きます。単発の施策よりも、毎月同じ視点で数字を見直す仕組みを作ることが、1年後のRevPAR差になります。
月次レビューで見る5つの視点
レビューミーティングでは最低限、以下5点を毎回確認します。
- RevPAR/OCC/ADR の前年比・前月比:動いた方向と幅を押さえる
- 曜日別のRevPAR:平日と週末のどちらが弱いかを特定
- ルームタイプ別ADR:上位タイプの販売比率の推移
- チャネル別RevPAR:手数料控除後の実効単価で評価
- 次月・翌々月のオンザブック進捗:先行指標で打ち手を前倒し
改善施策の「1ヶ月1個」ルール
月次レビューで打ち出す施策は、原則「1ヶ月1個」に絞ります。複数施策を同時投入すると、効果測定ができず学習が溜まりません。施策→測定→修正のサイクルを月単位で回す方が、長期的にRevPARは伸びます。
まとめ:RevPARは会話の共通言語
RevPARは単なるKPIではなく、総支配人・レベニューマネージャー・セールスがコミュニケーションを取るための「共通言語」です。OCCとADRを分解し、象限別に打ち手を決める型を共有することで、意思決定のスピードと一貫性が大きく改善します。
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