2026年ホテル業界ベンチマーク:全体像

約65%
全国平均 客室稼働率(年平均)
約17,000円
全国平均 ADR(参考レンジ中央値)
約3,500万人
2024年 訪日外国人旅行者数

出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査(2024年)」、JNTO「訪日外客数統計(2024年)」、各社公表のホテル市場レポートより作成(数値は参考レンジ)

ホテル経営のKPIは、自社の数字だけを追っていても評価できません。同じOCC 65%でも、全国平均に対して高いのか低いのか、同エリアの競合と比べてどうかを照らし合わせて初めて「好調/不調」の判断ができます。本稿では、観光庁・日本ホテル協会(JHMA)・STRなどの公式統計から、2026年時点で経営判断に使える主要ベンチマークを整理します。

2024〜2025年は、インバウンド復活と物価上昇の両方が進行し、観光庁「宿泊旅行統計調査」では全国平均のOCCが約65%、三大都市圏では75〜80%まで回復しました。JNTO「訪日外客数統計」では2024年の訪日外国人は約3,500万人と過去最高を更新しており、ADR水準もパンデミック前を大きく上回る水準で推移しています。

地域別のOCC・ADR・RevPAR

全国平均だけでは地域差が見えません。観光庁の統計およびSTRのレポートから、地域カテゴリ別の傾向を以下にまとめます。

エリア OCC目安 ADR目安(円/室) 主な特徴
三大都市圏(東京・大阪・京都) 約75〜80% 20,000〜35,000円 インバウンド比率が高く、ADRの上昇が顕著
地方中核都市(名古屋・福岡・札幌等) 約65〜75% 12,000〜20,000円 出張・イベント需要とインバウンドが共存
地方都市・その他 約55〜65% 8,000〜14,000円 平日と週末の稼働差が大きい
リゾート・温泉地 約50〜60% 20,000〜40,000円 ADRは高いが稼働の季節変動が大きい

出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査(2024年)」、STR Japan公表レポート(2024年)、JHMA加盟施設統計より作成。数値は参考レンジであり、施設カテゴリ・グレード・季節により変動します。

地域別ポジショニング:OCC × ADR 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 ADR(円) 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% OCC(%) リゾート・ 温泉地 地方都市・その他 地方中核都市 三大都市圏 (東京・大阪・京都) 矩形 = OCC × ADR のレンジ。同じOCCでもADR水準が違えば戦略は変わる

図1: 地域別OCC × ADRポジショニングマップ / 出典: 観光庁・STR・JHMA統計より作成

上図は、OCCを横軸・ADRを縦軸にとった地域別ポジショニングマップです。三大都市圏は稼働・単価ともに高水準で右上に位置し、地方中核都市はその左下の「中堅ゾーン」。地方都市・その他は左下、リゾート・温泉地は単価だけ突出して左上に張り出します。「全国平均OCC 65%」という数字は、この分布の重心にすぎません。自施設がどのゾーンに属するかで、比較すべきベンチマークも戦略の優先順位も変わります。

三大都市圏(東京・大阪・京都)

インバウンド需要の中心。2024年のADRは都内ミドルクラスで20,000〜25,000円、アッパークラスで30,000円を超える水準まで上昇しました。OCCも70%後半〜80%前後と高水準で、RevPARは前年比で大きく改善しています。

地方都市・リゾート

地方都市は平日と週末の稼働差が大きく、年間平均では55〜65%程度。リゾート・温泉地はADRが高い一方で季節変動が大きく、年間平均OCCは50〜60%程度が一般的です。ベンチマークは「年平均」だけでなく「平日/週末別」「シーズン別」での比較が実務的です。

経営指標のベンチマーク:人件費・OTA依存・館内売上

客室指標だけでは経営の強さは測れません。人件費率・OTA依存度・館内売上比率の3つを重ねて見ると、収益構造の体力が見えてきます。

人件費率

JHMA加盟施設および各種業界レポートでは、フルサービス型ホテルの人件費率はおおむね30〜40%、リミテッドサービス型(宿泊特化)で20〜30%が目安とされます。直近では最低賃金上昇と人手不足により、人件費率は上昇傾向にあります。ベンチマークと比較するときは、施設形態(フルサービス/宿泊特化)を揃えることが重要です。

OTA依存度

観光庁の統計および各社公表データによれば、国内宿泊の約半分がOTA経由と推計されます。直予約比率は施設タイプにより大きく異なり、都市型ビジネスホテルでは20〜30%、リゾート・旅館では30〜50%、ラグジュアリー施設では40〜60%というレンジが一般的です。OTA依存度は「高いほど悪い」わけではなく、粗利ベースで見て採算が合っているかが論点です。

館内売上比率

フルサービス型ホテルでは、宿泊売上に対するF&B・宴会売上の比率が40〜60%程度。旅館では夕朝食込みのプラン販売が多いため、売上構造そのものがF&B一体型になります。宿泊特化型はほぼ客室売上のみという施設も一般的です。館内売上比率はホテルタイプを定義する指標でもあり、ベンチマーク比較では施設形態を揃える必要があります。

ベンチマーク比較の最大の注意点は「平均値のトラップ」です。全国平均OCC 65%を目安にしても、自施設がビジネスホテルなのかリゾート旅館なのかで適切な目標値は大きく変わります。必ず同じ地域・同じ施設タイプの数字と比較してください。

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ベンチマークの使い方:3つの論点に絞る

ベンチマークを集めても、使い道が曖昧だと数字が意思決定につながりません。以下の3つの論点に絞るのが実務的です。

1. 自施設は「平均より上か下か」

まずOCC・ADR・RevPARを全国平均・エリア平均・施設カテゴリ平均と比べ、上下どちらにどれだけ乖離しているかを見ます。RevPARでの比較が最も実態を反映します。ADRだけ比較すると、OCCとのトレードオフが隠れます。

2. 構造要因と運用要因を切り分ける

立地・施設規模・ブランド力など「構造要因」と、価格戦略・プロモーション・運用効率など「運用要因」を切り分けて評価します。構造要因は短期では動かせないため、打ち手は運用要因に集中させます。

3. 前年比と競合比を両方見る

前年比だけ見ると業界全体のトレンドに流されます。同エリア競合との相対比較(Competitive Set、コンプセット)と合わせて見ることで、自施設の強み・弱みが明確になります。STRのSTAR Reportは、コンプセット比較のレポーティングで広く使われている標準ツールです。

主要な公式統計と参照先

まとめ:ベンチマークは「使う」ために集める

ベンチマーク統計は、集めることが目的ではありません。自施設の数字と照らし合わせ、「何を伸ばすべきか」「どこを守るべきか」を決めるために使う道具です。RevPARで平均以上を狙うのか、客単価(TRevPAR)で勝負するのか、直予約比率で粗利を守るのか──ベンチマークとの距離感が、戦略の優先順位を決めます。

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