オーバーブッキングは「起きたらどうするか」を事前に決めておく

客室数を超える予約を受けてしまうオーバーブッキング(ダブルブッキング)は、宿泊施設にとって最も避けたいトラブルの一つです。しかし、複数のOTAに在庫を配信し、電話やメールでも予約を受ける以上、完全にゼロにすることは困難です。

重要なのは、発生時に混乱を最小限に抑えるための「対応手順」を事前に整備しておくことです。手順が決まっていない状態でオーバーブッキングが発覚すると、ゲスト対応の質が下がり、口コミへの悪影響が長期間残ります。

35%
SC未連携施設のオーバーブッキング経験率
8%
SC連携施設のオーバーブッキング経験率

出典: ホテルシステム研究所「サイトコントローラー導入効果調査」(2024年)

発生時の対応フロー

オーバーブッキングが発覚した時点から、以下のステップで対応を進めます。

Step 1: 事実の確認と影響範囲の特定(発覚直後)

まず、実際に何室分のオーバーブッキングが発生しているか正確に把握します。PMSの予約台帳と各OTAの管理画面を突合し、重複予約の件数と対象日程を特定します。同日の予約一覧を時系列で確認し、どの経路(どのOTA、電話、自社サイト)の予約が重複の原因になったかも把握してください。

Step 2: 代替宿泊先の手配(ゲスト連絡前に)

ゲストに連絡する前に、代替の宿泊先を確保します。同グレード以上の近隣ホテルに連絡し、空室状況と受け入れ可否を確認します。代替先は「同等以上」が原則です。ゲストに代替先を提案する際、グレードが明らかに下がる施設では信頼を大きく損ないます。近隣の施設と日頃から相互協力関係を築いておくと、緊急時の手配がスムーズになります。

Step 3: ゲストへの連絡と代替案の提示

代替先を確保できたら、できるだけ早くゲストに連絡します。連絡は電話が基本です。メールだけでは確認が遅れ、当日チェックイン時に発覚するという最悪のシナリオになります。連絡の際は、(1) 心からの謝罪、(2) 状況の簡潔な説明、(3) 具体的な代替案の提示、(4) 補償内容の説明、の順で伝えます。

Step 4: 補償の提供

代替施設の宿泊費は自施設が負担するのが基本です。それに加えて、以下の補償を検討します。交通費(自施設から代替施設までのタクシー代など)の負担、次回宿泊時の割引や無料アップグレードの提供、お詫びの品(地元の銘菓など)の手配。補償基準は事前にマニュアル化しておき、現場スタッフが上長の承認なしに即座に判断・提示できるようにしておくことが重要です。

Step 5: 記録と原因分析

対応が完了したら、発生日時、原因経路、対応内容、ゲストの反応、発生コストを記録します。この記録は再発防止策の検討と、将来同じ事態が起きた際の対応品質向上に不可欠です。

絶対にやってはいけないこと
- チェックイン時までゲストに伝えない(最悪のパターン。口コミに確実に書かれます)
- 「先着順」でゲストを選別する(予約成立時点で宿泊契約は成立しています)
- OTAに黙って予約をキャンセルする(OTAからのペナルティと掲載停止のリスクがあります)
- 代替先を用意せずにキャンセルを依頼する(ゲストに問題解決の負担を転嫁することになります)

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再発防止策

オーバーブッキングの根本原因は「在庫の一元管理ができていないこと」です。以下の施策で再発を防止します。

サイトコントローラーの正しい設定

在庫管理のルール整備

チャネル数の削減という根本対策

オーバーブッキングのリスクは、販売チャネルの数に比例して高まります。5つのOTA、自社サイト、電話予約を並行して管理する施設と、2つのOTAと自社サイトだけの施設では、在庫管理の複雑さが大きく異なります。

多数のOTAに在庫を配信している施設は、各OTAの手数料対効果を分析し、効果の薄いチャネルを整理することを検討してください。チャネル数を減らせば、在庫管理が単純になり、オーバーブッキングのリスクも下がります。

直予約シフトでチャネル数を最適化

OTAチャネルを整理する一方で、公式サイト経由の直予約を強化することが現実的な戦略です。直予約は在庫管理の観点でも最もシンプルで、手数料もかかりません。

ChatGPT、Gemini、PerplexityなどのAI検索エンジンは、旅行者を施設の公式サイトに直接誘導する新しいチャネルとして注目されています。AI検索での推薦獲得に取り組むことで、OTAに頼らない集客が可能になり、結果としてチャネル数の最適化とオーバーブッキングリスクの低減にもつながります。